言葉ってスゴイモノ | 愛しいカンケイ
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言葉ってスゴイモノ

【2010.04.24 Saturday 07:20

 言葉ってスゴイモノだって気がついたのは
いったい、いつのことでしょう。

覚えているのは、小学校の五年生のとき、
言葉を使って伝えることの面白さにドキドキしたことくらい。

でも、正直、何にドキドキしたのかは定かではなく、
もしかすると、
美術館にある彫刻のように美人なのに、
恐ろしいほど神経質で、
生徒の前で笑顔をみせるのは数えるほどの担任の先生が、
私の書いた四百字ぽっちの母の日の作文に白い歯を見せ、
笑顔で誉めてくれたのがうれしかっただけなのかも。


ともあれ、薔薇のような笑みを浮かべる彫刻に、
わぁっ、きれい!と目を見張ったのと、
「すごくよく書けてる、先生はとても好き、
もっといろんなことを書いたらいいわ」と言ってくれたのを、
ドキドキしながら、ぼぉっと聞いていたのです。



以降、書くことは大好きな私、
生意気盛りの十代のころは、「書くことだけが言葉なんて!」と、
踊ってみたり、歌ってみたり、
思いつくことは何でもやってみました。

本当に何でもが、荒削りな言葉だったように思います。

そして、月日が流れ、
いまも十分に生意気に違いないワタクシは、
子育てとは、自分を見る作業だとひしひしと感じ、
日々痛い目にあっています。

いえいえ、学びをありがたく受け取り、成果として、
自分はあの五年生のときと大して変わらない
という事実に愕然としつつ、
子どもの成長はもとより、
自分の成長に一喜一憂しているわけです。

そんな親ですから、娘にとっての、
「言葉はスゴイモノなんだという発見」
を見逃したくはありません。

言葉は私たち自身。

私たちが、その想いを、魂の存在を伝えるために、
そしてそれらが呼応するために、
言葉があるのだと思っています。

言葉は時に、言語そのものへ、人間の肉体へ、
動へ、静へ、
目で見え、耳で聞こえ、
肌で感じ、舌で味わい、沸き立つ匂いへ
とカタチを変え、肉体の生と死にかかわらず、
伝え続けられていくもの。

抽象的に思われる方もいらっしゃるかもしれませんので、
ちょっと具体的に、言葉のカタチとして、
もっともわかりやすいかもしれないカタチ、
「言語」を例にとってみましょうね。

みなさんにとって一番身近な言語は日本語でしょう。
私も同じです。

普段の生活のなかで、日本語、英語、ハワイ語を使いますが、
もっとも愛しているのはもちろん母語の日本語。
言葉を自分により近いカタチであらわすためには、
母語であっても、学び続けるべきだと思っています。

地球上にはいろいろな種類の言語があります。
それを考えると、第二、第三と、
できるだけ多くの言語に携わることで、
私たちの言葉は伝わりやすくなり、呼応されやすくもなり、
そこに芽生えるものも増えるに違いありません。

となれば、がんばるぞ、と、
英語とハワイ語に取り組むなか、
不思議なことに、英語はいつまでたっても道具的存在。
くらべて、ハワイ語は少しずつ
愛しき言葉のカタチになってきています。

なぜなのでしょうか。

それは、言語の源である文化への親しみの度合いが
原因のような気がしてなりません。

先日、数日間に渡って、毎日午後3時半から4時半まで、
ハワイ州の教育委員会のオフィスの前で、
私たちはラリーを行いました。



プーナナ・レオ・オ・マウイとクラ・カイアプニ
教師、生徒、父兄、卒業生、関係者などが続々と集まった
この抗議運動は話題になり、新聞、テレビなどに報道され、
抗議をうけた教育委員会が、いま議題を検討中です。

ハワイ州の各島にあるクラ・カイアプニは、
公立の学校に付随し、その運営システムを共用しながら、
OHA(Office of Hawaiian Affairs)という
ハワイ人の人々のための活動を行う事務局や、
クラ・カイアプニの父兄によって運営される
非営利団体ナー・レオ・カーコウとともに、
ハワイ語で子どもたちを教育する機関。

今回の出来事は、クラ・カイアプニが付随している
公立のパーイア小学校が、クラ・カイアプニに入学を希望する
35人の生徒を学校経営や教育委員会の諸事情で、
検討することなく、20人までしか受け入れようとせず、
さらに20人を選ぶために抽選をおこなおうとしたことに
対する厳重な抗議でした。



小さな数字に思う方もいるかもしれませんが、
私たちにとっては大きな数字。

教育委員会のあるワイルクの町の交差点は、人だかり、
ラリーを応援する人の車が一斉にならすクラクションは
ラリーを行った一時間、途切れることはなく、
子どもたちの声、歌、パフ(ドラム)でならす音とともに
町中に響き渡ったのです。





ハワイ語が衰退した大きな原因はいくつかあります。

ひとつは、1778年のジェームズ・クック船長の来航で、
ハワイが西欧文化に発見されたこと。

外来者によってもたらされたのは、先住民の人口、
1778年の推定30万人から、1892年の4万人への激減。
伝染病の猛威、外来者によって1848年に成立された
土地分配法によって経済的基盤を失ったことが主でしょうが、
文化を大きく乱されたことで多くのハワイの人々が
心理的に衰え、家族の絆が引き裂かれたことは
言うまでもありません。

ふたつめは、近代化を急ぎすぎたこと。

これはハワイに限らず、その時代の多くの国で起きた出来事で、
国家を統一することを重視しすぎたために、
有力民族語の教育に意識が行き届いていなかった
という事実です。

みっつめは、1893年にハワイ王国はクーデターによって転覆、
米国によって併合されたという歴史でしょう。

転覆後、ハワイ共和国となったハワイでは、
共和国政府を統率するサンフォード・ドールによって、
1896年に英語が公用語となり、
その後、ハワイ語を教育言語とする学校は全て閉鎖。

ハワイ語を校内で話すものには、
体罰があったという記録もあるほどで、
結果、1983年ごろの調査では
18歳以下でハワイ語が話せる子どもは
約30人程度となってしまっていたのです。

しかし、1970年代にハワイ文化復興運動がはじまり、
その数年後にハワイ語は英語とともに州の公用語へ。
1980年代にはハワイ語で子どもを教育するプログラムが発足し、
プーナナ・レオ、クラ・カイアプニという学校が創立されました。

現在、毎年州内で1500人規模の卒業生を輩出しています。
卒業するには、入学しなくてはならないのですから、
小学校入学への規制は断固防がなくてはなりません。



母語の大切さ、言語の源である文化の重要性は、
日本人である私には、十二分に理解できます。
正しいと思うことをする、何が正しいかを教える、
それが母の務めですからね。

言葉をカタチにするときの、もっとも身近な存在である言語。
そして、言語はただの音声でも、表記でもなく、
源からほとぼしるものであることを、伝えたいと思うのです。



限りある私が、限りある状態しか伝えることのできない
日本語への愛を、
ハワイ語という言語をじっくり学ぶことによって、いつの日か、
「言葉ってスゴイモノじゃない!」って気がついてくれたら、
母はうれしいのであります。

I ka ‘olelo no ke ola, i ka ‘olelo no ka make.

言葉に命を!
命を吹き込まなくては、失ってしまうから!

author : jingujiai
| SPEAK with aloha | comments(8) |

この記事に関するコメント
言語は、「言葉をカタチにするときの、もっとも身近なものであり、音声でも表記でもなくて、源からほとばしるもの」という文章と、まだお会いしたことないけれど、何度かのメールのやり取りで感じさせてくれた愛さんご自身とが重なります。こういう背景があってこその愛さんの、温かいコミュニケーションなんだと思います。
そして言葉は、教えて学ぶことより、生活の中で影響を受けて学んでいくことが大きいから、愛さんの周りにいる方々には、そういう種がこぼれ落ちていると思うんです。
| 谷澤 | 2010/04/25 7:53 PM |
体の具合はいかがでしょうか〜?
久美子さんが具合が悪いと心配ですよ。
でも、具合が悪いときに知ることもたくさんありますよね、
ほら、久美子さんがどんなに愛されているかとか。
子どもが具合が悪くなったとき、いっぱい愛してるを伝えると
早く回復したりするものですもん、大人も風邪引いたときに、
愛情確認するとよいのですよ、きっと。
生活のなかで学ぶ、かぁ。
責任重大ですね、お母さんの私って。
でも、ふふふ、子どもってお母さんだけが育てるもんじゃないしね。
と、私は子どもが生まれたときから思っているので、
いつもはあまり気にしていなくって、お母さんじゃないと駄目の
シチュエーションに備えているだけの人なんですけどね、へへへ。
| 愛→久美子さん | 2010/04/27 6:56 AM |
僕は、いつも言葉って魔法ようなものだと感じています。

言葉一つで人は元気になったり落ち込んだり。
あの言葉があったから今の自分がある、なんて人も多いんじゃないかと思います。

僕は言葉というものがとても好きです。
良い言葉はいつまでもいつまでも心に響き続け、人を成長させてくれる、そんな力が言葉にはあるように思えるのです。
| 橋屋 渡月 | 2010/05/06 9:51 PM |
そうですよね、本当に。
無言実行より、有言実行です。
言葉にすることで、夢や目標がかなう、ほんと、魔法ですね。
渡月さんの目指されているお仕事も、
言葉が大事ですよね。なんかちょっと、魔法使いみたい。

近年は、言葉を伝えることの大切さが身にしみます。
このブログの一番初めにも書いたのですが、
大好きだったハワイのママ、アンティ・ケアラとの別れ際、
I love youってちゃんと言葉にしていてよかったと思いました。
愛することに後悔はしたくないですからね。

渡月さんの目標、応援してます!
がんばってくださいね。
| 愛→渡月さん | 2010/05/07 4:14 PM |
あ〜い〜。ふとしたきっかけでこのブログを知り、とっても懐かしくなりました。元気でなによりです。愛と行った初めてのマウイの情景がまぶたの裏に浮かんできました。また、会ってバカ話でもしたいです。東京に来るときは連絡を。
| norie | 2010/05/12 1:47 PM |
愛さん、こんにちは。
ご無沙汰いたしました。

私はハワイ語が好きです。
今力をもっているのが英語でも、ハワイの国や風土、習慣、祈り、心、人・・・などを一番表現できるのは土地の言葉だと思っています。
それは日本でも同じで、日本の風習や趣を表現するには日本語が一番ですよね。
だから、もっとその国のことを理解したいと思うと、言葉はかかせません。

といっても、ペラペラを目指すわけではなく・・日常の中で落ちている小さい単語を拾うのが好きです。
好きなのは断トツの一番で「Mahalo」
やわらかく歌うようなイントネーションを、この間の旅行で初めて知りました。
嬉しかった!!

もっとハワイの言葉拾いたいです。
だから、学校の門戸をもっと広げてください!!
| チカ | 2010/06/08 6:43 PM |
のりえ〜、懐かしいね。
なんてコメントへの返事も遅くなって、
きっともう読まないかもだけど、
また、連絡するよ。
のりえはどうしてるのかね。
元気にしてるのかな。
| 愛→norie | 2010/10/08 5:19 AM |
ご無沙汰してしまいました〜。
今年はプライベートも仕事もとにかく忙しく、
空色庵をこの数ヶ月留守にしてしまいました。
いつも読んでくださっているチカさんに
申し訳ないです。ごめんなさい!
やっと復活しました。

ハワイ語についての本や雑誌の記事はありますが、
生きている言葉として扱われていることは
少ないように思います。
なので、ここではそれができたらなと思っています。

Alohaの次が、Mahaloで、
私からチカさんに送る三番目は、
analikeです。アナリケ、意味は分け合う、です。
| 愛→チカさん | 2010/10/08 5:24 AM |
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神宮寺 愛
writer & coordinator
(J.U.One Corporation)
'ōlapa(Pā'ū O Hi'iaka)
@ Maui, Hawaii