森へ、森へ、太陽の家のある森へ | 愛しいカンケイ
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森へ、森へ、太陽の家のある森へ

【2010.03.30 Tuesday 06:30

太陽の家のある森のなかへ、足を進めていくと……

と聞くと、やわらかいソファに体を沈めて、
布製の背表紙のついた本の、古い紙の匂いのする一ページ目を
読みはじめたような気分になりませんか?

ちょっとみなさまにご無沙汰してしまったワタクシ、
つもる話は山のようにあるのですが、
まずおすそ分けしたいのは、太陽の家のある森の物語。


太陽の家のある森は水を湛えた豊かな森

さて、雲をつかむような話ではあります、
ええ、本当に雲をつかめるほどの高さなのですよ、そこは。

マウイ島のハレアカラー、
ハワイ語では、Hale a ka la(ハレ・ア・カ・ラー)、
ハレとは家、ラーとは太陽、ということで、「太陽の家」。

ハレアカラーはマウイ島の最高峰、Pu'u 'ula'ula(プウ・ウラウラ)
「赤い丘」と呼ばれる頂は10023ft、つまり3055mの標高。
雲を上から見下ろす高さです。

132の島々からなるハワイ諸島のなかの主要8島といえば、
上からカウアイ、ニイハウ、オアフ、モロカイ、ラナイ、
カホオラヴェ、マウイ、ハワイ(ビッグアイランド)をさすようですが、
この順番は実は、島の年齢を上から読みあげたもの。

余談ですけれど、モロカイ、ラナイ、マウイ、カホオラヴェは
地図をみるととても近いのがわかると思いますが、
以前は大きなひとつの島だったことから、
この島々をまとめてマウイ・ヌイ(大きなマウイ)と呼び、
現在のマウイ郡としてひとつのまとまりです。

マウイ島は、いまだに火山活動の激しいハワイ島の次に若い島、
1790年の最後の噴火以降、火山活動は認められず
休火山となり、現在に至っています。

島の名前に唯一、古代の神さまの名前がついているマウイ島、
マーウイという半神の伝説は、
太陽の家ととても深い結びつきがあるのです。

数限りなくあるマーウイの伝説のなかで、
ハレアカラーが登場するのは、マーウイのお母さんの
ヒナ・ア・ケアヒがカパという布を作るときに、
乾かすための時間が足りないから、
ハレアカラーに住むマーウイのおばあちゃんであるマフイエに、
太陽が早く沈まないようにするにはどうしたらいいのかを
相談に行く場面。

マフイエはマーウイに特別な手斧(ちょうな)と縄を渡し、
彼女の家の近くの古いヴィリヴィリの木の根元に隠れ、
噴火口の一番東に太陽が現れたら、縄を投げて
太陽の足を捕まえるように言い渡すのです。

マーウイはおばあちゃんの言った通りにしたので、
太陽に縄をひっかけることができました。
太陽は逃げまどって、海に戻ろうともしましたが、
マーウイは自分が隠れていたヴィリヴィリの木に
縄の反対がわをしっかりと結びつけてしまいます。

そして暴れる太陽と手斧で戦ったのです。
手斧で痛めつけられた太陽の足は弱くなり、
とうとう太陽はマーウイの言うことを聞くことになりました。

ちょっと太陽の足の怪我が心配にはなりますが、
この戦いがなければ、いまのように太陽がしっかりと大地を
照らさなかったのですから、マーウイと太陽に感謝し、
太陽の住む家を居心地のよいものに
しておかないといけないですよね。

その太陽の住む家のある森は、現在国立公園となり、
固有の自然がかなりしっかりと守られています。
私が今回入らせていただいた森も、
国立公園のパーク・レンジャーの同行がなくては
決して入ることのできないエリアなのです。


森のなかは、海のなかに似ています

どうして、私が入ったのかというと、
マウイ・フォレスト・バード・リカバリー・プロジェクトの一環。
固有の植物、動物を育てて森を守ろうという活動です。

ハワイは1778年のイギリス人ジェームズ・クックの来航までは、
人の出入り、物流はカヌーのみで行われていたため、
固有の自然体系や人間を含む動物の生態系が乱れることは
ほとんどなかったのです。

しかし、太平洋の真ん中にあるハワイは、
太平洋を渡って何かをしたい人間たちにとって
好都合な場所にありすぎました。

1778年以降、あらん限りの出来事が起こり、
人と物が行き来するようになり、現在にいたっているのです。
それはまるでバランスを失った天秤のように。

天秤が揺れれば押さえる手が必要、
その手は一本でも多いほうがいい。

そして今回、標高の高い場所にも関わらず、
私たちは子どもたちをつれて入ることにしました。

普段は河口を掃除し、木を植える活動にのみに参加する
クラ・カイアプニの子どもたちに、
太陽の家のある森に暮らす鳥たちを見せてあげたかったのです。

森に入る私たちはまず、衣類や靴をすべてブラシではたきます。
  
森の入り口にたち、全員が輪になって祈り、
森に入ることをお願いするためのチャント(詞)を唱えました。

風と鳥の鳴き声を合図に、森へ。


固有植物の木を植えて強い森に!

約150の固有の鳥類を保護し、
森を守る国立公園のパーク・レンジャーとともに、
プロジェクトが行った植林の成果を確認に向かいます。

この森は人間が持ち込んだ家畜、特に山羊の被害と、
外来種の植物がもたらす害を受けて、
一度はもう植物が育たないかのように思われていました。

しかし、国立公園と、国立公園以前の地主であった
ハレアカラ牧場の努力によって、保護区域を囲むフェンスが
10年もかけて張り巡らされ、家畜の害を防ぐことに成功しました。

そして、その後ハワイ州の森林保護部門やハワイ大学、
そして私たちのような民間団体のもと、
植物、鳥類、昆虫類などをリサーチし、保護し、
手をかけ、森が蘇るのを助けているのです。

特に鳥類は人によって運ばれてきた蚊の被害をうけ、
絶滅品種も数多く、いまも細心の注意がはらわれています。

「I'iwiが鳴いた!」

まるで花のように美しい赤い鳥、I'iwi(イイヴィ)は、
さえずりが、「イイヴィ、イイヴィ」と聞こえるため、
子どもたちはすぐに反応します。

「静かにしていないと、姿が見られないのよ」
「……、……」
「イイヴィ、イイヴィ」
「あ!!」
「しぃーーーっ!」


赤いレフアの花にたたずむI'iwi
(C) JackJeffreyphoto.com

森のなかで静かに佇めば、鳥たちは木々を渡ります。
目を凝らせば、'Akohekohe(アコヘコヘ)も。


スタイリッシュ!?なヘアスタイルですよね
(C) Eric Narashima


アコヘコヘのくちばしの上のふんわりとした羽毛は
蜜を吸うときに花から花へと花粉を運ぶ役目があるとか、
まる蝶や蜂のようですよね。

余談ですが、ハワイの文化のなかで、
鳥は男性を、花は女性を象徴することが多いのです。
ですから、このように花の蜜を吸う鳥が多いことに
うなずいてしまいます。

子どもたちは標高2000メートル以上の高さの山中を
本当によく歩きました。



森のなかを歩きながら、私が想いつづけたのは、
南アに住む、私の姉的存在の友人、
吉村峰子さんの夫、稔さんのことでした。

4月13日、稔さんは亡くなりました。

私を含む、稔さんを知る人々はみな、
彼のことを絶対に死なない人間だ
と思っていたに違いありません。

JICAに勤務し、長年のアフリカ勤務のなかで、
どんな危険な任務も全うし、たくさんの人間の命を守り、
自分も必ず戻ってきた稔さんは、
私が知っている日本人のなかで一番強い人でした。

そんな稔さんに、峰子さんは、
「もうっ、稔は!」とお説教が日常茶飯事。

でも、私からみると、こんなにそっくりな夫婦はいない、
と思えるほどの二人でした。
そして、二人の子どもたち、
息子も、娘も、両親を鏡に映したような存在。

娘のショウコちゃんは、自分もつらいであろう、
お父さんの事故確認の直後、私にすぐ連絡をくれました。

「お父さんは愛ちゃんが本当に好きだったのよ。
だって、お母さんはどんなときだって、
愛ちゃんと話をするとHappyになったから。
お母さんを幸せにしてくれる愛ちゃんに
お父さんはとても感謝していたの」

私は泣きに泣きました。
しかも大声で。

森は私の心中をしっていたかのように、
絞りきった布切れのようになった私の心を
霧雨のような恵みの水でぬらし、洗っていきます。


樹齢1500歳のオヒアの木、
溶岩台地に一番はじめに生える、パイオニア・ツリー


すべての生きとし生けるものが眩いほどの命を見せる、
山や海のなかで、私はいつも目を瞑ります。

すると私の体はまるでアウトラインをなくしたかのように
それらと溶け合っていくのです。

自然の大好きだった稔さんは、
きっとこうやって自分の魂をいつも確認していたんだろうな。

神さまに愛されすぎた、類まれな魂は、
きっと次の任務をまっとうするために、
神さまの瞬きを合図に飛び立っていったのかもしれない。

そう思った途端、胸の痛みは引いていきました。

準備をしなくてはいけない、
姉をHappyにするために。
妹はいつだって、姉を幸せにする、
姉妹は助け合うのが当たり前なのだから。

森をでると、椰子の実がゴロリ。
「稔さんからの差し入れかも」とつぶやく私の横で、
娘は飲みたい、食べたい、で大騒ぎ。



また森にお世話になってしましました。

どうもありがとうの気持ちをこめて、
毎日ひとつ、森への恩返しを
私たちの行動で見せていくこと。

それが我が家の日課です。
 

author : jingujiai
| ACTION in our life | comments(8) |

この記事に関するコメント
空色庵のファンです。いつも楽しみに拝見してます。森に入るためのブラシ掛けにとても感動しました。自然に敬意を祓う行為見習わなくてはと思います。。地球を泣かせる事をやめるために一人でも多くのお母様方が貴方様のようにお子様に伝えていって欲しいなと思います。自然に還ってしまった吉村さん残念です、でも奥様には見守ってくれる心強い妹、愛さんがおられるきっと大丈夫!
| summer | 2010/03/30 11:44 PM |
ペンネームが素敵!と感動しちゃいました。
娘のアイナは夏生まれなので、アイナのナは漢字だと夏なんですよ。空色庵自体のファンとおっしゃってくださっているのが、またうれしく、これからもがんばるぞーと思ってしまいました。
そして、私も同感です、一人でもの多くのお母さん、お父さんが
子どもに大切なものを大切にすること、その方法を伝えていけば、
きっと必ず自然は守られるし、よい世の中になると思うんです。
私一人ががんばっても、世の中や未来は変わらないとか、思っているのは悲しいことですもの。吉村さんのカフェグローブのブログを読んであげてください。稔さんのこと、とてもしっかり書いてあります。
それではまた!
| 愛→summerさん | 2010/04/03 3:53 PM |
そうですか?アイナちゃんは夏の子だったんですか。愛らしくてのびのびとお育ちになられてるようで楽しみですね。
  私も(昔の)夏の暑い盛りにこの世に出てきました。クーラーも冷蔵庫もない片田舎でした。自然がいっぱいで涼しかったんですよ。ハワイは40年前に一度ツアーで行っていつか又行きたいと思ってる所なんです。
空色庵でハワイの事色々伝えてくださるのがとても楽しみで拝見しております。もちろんメンバーの方のエッセイも欠かさず楽しく拝見させていただいております。フレー!フレー!\(^o^)/頑張って下さい。
| summer | 2010/04/09 4:44 PM |
通りすがりですが、温かく素敵な写真だったのでコメントさせていただきました(^v^)

画像には温かい精霊が映っていますね♪

これからも愛しい暮らしをお続けなさってください〜☆
| tatsuya | 2010/04/13 4:04 AM |
久しぶりにこちらに寄せていただだきました。

自然の中の一部のはずの人間が、自然を壊してゆく。あってはならないことなのですが、それが今の現実。

でも、それを人間がなんとか食い止め、回復させようと懸命に頑張っていることもまた事実

10年かけて出来上がったフェンスが、そのことを物語っていますね。

私事ですが、いつぞやお話したキャリアカウンセラーの一時試験に合格し、4/24に二次試験を受けます。それでバタバタとしている4月です。合格後はキャリア支援の専門家を目指してスタートしていこうと考えております。何か一つでも人の役にたつことができれば・・・とと思う今日この頃です。
| 橋屋 渡月 | 2010/04/14 4:50 AM |
ハワイはきっと40年で随分変わりましたよ。私がいる10年でも相当変わってきています。それでも、変わらないものもあるし、変わってよくなっていくこともあり、とても考えさせられます。
夏は私の大好きな季節です。特に日本の夏は、とても好き。来年の夏は日本で過ごせればと思ったりしています〜。私のブログはあまりハワイの情報という感じにはなっていないかとは思いますが、暮らしのあれこれ、お伝えできればうれしいです。娘は毎日500メートル以上を泳ぐ健康優良児です。将来はライフガードとアーティストになるのが夢だそうで、母としては両方すれば?(マウイ島のライフガードは公務員なんです・笑)とお返事しています。
| 愛→summerさん | 2010/04/14 8:05 AM |
いつでも通りすがりに一休みにきてくださいね。
写真を褒めていただいてうれしいです。
仕事柄、ものすごい数のプロのカメラマンと仕事してきているので、
どうも、自分の写真に自信はなく、仕事で写真をとっても、
記事を納品するときと、写真を納品するときでは、いまでも、
気分が違うのです。でも、気持ちはこめて撮ってます!
スピリットも写ってくれてるのは、そのせいですね。
| 愛→tatsuyaさん | 2010/04/14 8:09 AM |
お久しぶりです!
いよいよ試験ですね。楽しみです。
マウイから祈っていますね。
渡月橋のように、素敵な橋になって、
人と人の間の橋渡しのお仕事をなさるような気がして、
とても楽しみですよ。
私も今年は秋に大きなプロジェクトがあるので、
その準備に今から忙しくしています。
プロジェクトのなかでいろんな役目を担当しているのですが。
まえから挑戦したいと思っていた、昨日、字幕を書く担当が
私に決まり、がんばるぞ〜と意気込んでます。

トラ年は幸福をトラえる年と聞きましたので、
がんばりましょうね!!
| 愛→渡月さん | 2010/04/14 8:15 AM |
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神宮寺 愛
writer & coordinator
(J.U.One Corporation)
'ōlapa(Pā'ū O Hi'iaka)
@ Maui, Hawaii