Moments of Hula O Na Keiki vol.3 | 愛しいカンケイ
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Moments of Hula O Na Keiki vol.3

【2009.12.01 Tuesday 09:21

 11月10日 火曜日

とうとう、やりました。
そんな日が来ると思っていたのです。

カウイの二番目の娘アウリイが、
イプへケをゴトンとコンクリートの地面に落としたのであります。

筋金入りのホオパア(オリの謡い手)であるカウイが、
長年使っていたお気に入りのもの……。


カウイがはじめてホオパアになったときから使っていたイプヘケ

アンティ・ケアラは、私たちダンサーを、

踊ることができるように、
楽器の演奏ができるように、
歌を歌うことができるように、
オリを謡うことがきるように、
スピーチをすることができるように、
司会をすることができるように、
舞台の上で求められるすべてのことに対応できるように、と、

「エンターテイメント」のできる人間として育ててくれました。

そんななかで、カウイはホオパアとして優れた才能を発揮。
彼女は、ものすごい速さでオリを覚え、
ダンサーのためにイプへケを叩き、謡うことのできるのです。
彼女の声はどんな場所でも、どんなときでも美しく響き渡り、
風や雨が、彼女の謡う詞に呼応します。

そのカウイが、今回の晴乃ちゃんの
カヒコの踊りの練習ががはじまった夏の終わりに、
私にこう言ったのです。

「愛、私のかわりにホオパアをしてほしいの。
いい勉強になるから。
ホオパアとしての経験を積みはじめてほしいの」

そして、自分が長年使っていたイプヘケと、
彼女が高校を卒業するときに贈られた、
名前が刻まれたイプヘケの二つを私に預けていきました。


カウイの娘の一番目のフラリ、いたずらっ子一号
この大きなのはアンティ・ケアラのイプヘケ

私にとっては重いイプヘケでした。
受け取らないという選択肢はないにも関わらず、
すぐに受け取ることのできないほどの重さ。

次の日から、走りはじめました。

娘のアイナが毎日一時間半の水泳のトレーニングをする間、
プールの横のサッカー・フィールドでの、
声を出しながら走るトレーニング。
何かしなくてはいられなかったのです。

このトレーニングは、腹式呼吸をコントロールすることが
できるようになるためのもので、何曲も続けて踊るときや、
歌を歌いながら、オリを謡いながら踊るときなどに
かなり効果がでるものです。


イプヘケを割った張本人はこちら、いたずらっ子二号のアウリイ

今回、晴乃ちゃんは踊る曲を自分で謡いますから、
私がすることといえば、晴乃ちゃんのクム・フラである
ジュンコ・ママと一緒に、彼女を舞台にあげるための
オリとカイを謡い、退かせるためのホイを担当するだけのこと。

それでも、私には一大事。

しかも、一緒にオリを唱えるジュンコ・ママは日本、
晴乃ちゃんも日本、二人がやってきてからの
一日、二日の練習で、二人に合わせられるのか
疑問でいっぱいでした。

それに加えて、頼みのカウイは、これまでただの一度も
私の練習を見ませんでした。

練習を見てほしいな、と頼んでも、
「愛ができるってわかってる。
愛の耳と目がいままでを覚えてるから大丈夫」
の一言でオシマイ。

いままでカウイの声と、彼女の叩きだすイプヘケの音のなかで
安心して踊っていた私が、今度は誰かを踊らせるっていうのに。

ですが、彼女の言うとおり、
できると思わなければ、何もできないですからね。
なんでも、やってみなければ、
できるかどうかなど、わからないですもん。

練習は案の定でした。

音程、速度、発音を合わせるところからはじめ、
カウイから物が飛んできそうなのをよける準備をしつつ、
汗ですべるイプヘケと手が離れないように結びつけた紐が、
指を手首にくい込んで、皮膚はむけるし、アザはできるし、
すっかり縄目をうけてきたような手首になり、やっぱり、
踊ってなくても痛いんだなという再確認。

練習の終わりに、カウイが、
「クム・フラのカポノアイのところにイプヘケを探しに行こうよ」
と言いだしました。

カポノアイ・モリタウはマウイ島のクム・フラで、
私の住むワイルクで、ハワイの文化にちなむ様々なものを売る
セレクトショップ「ネイティブ・インテリジェンス」を営んでいます。
優秀な職人さんによって作られた工芸品をはじめ、
グラフィックデザインが素敵なファッション・アイテムや、
書籍、写真などがお店に並び、ワイルクで一番おすすめのお店。

とても温厚な彼の人柄が伺い知れるのは、
彼の作るイプヘケやレイの美しさ。

「これ、ほら、愛に」

いろいろなイプヘケをさわっていたカウイが
私にそのなかのひとつを差し出します。

「自分のイプヘケを持つときがきたんだと思うよ。
愛は、私のホオパアなんだから」

私の手はもうそれを受け取っていました。

オーナーのカポノアイが横でにっこり。

「僕が作ったイプヘケを持つ人たち全員に、
イプヘケに名前をつけてもらっているんだ。
だから、この今日の夜、明日の朝くらいまでに、
きっと名前が思い浮かぶと思うから、気をつけていてね。
そして、名前が決まったら、教えにきてね」と。

ひいーーーーっ、眠れるかなぁ。


イプヘケちゃん、いらっしゃーい!

**********

11月11日 水曜日

この日は晴乃ちゃんの最後のカヒコの練習日。


こんなに離れても聞こえるくらいの大きな声でオリを言えるように!と
晴乃ちゃん、厳しい練習にがんばります!


13日と14日が本番ですから、
明日はレイを作ったり、衣装やヘアスタイルの最終調整など、
踊りの練習ではない準備があるのです。

眠れるかどうか、心配したわりに、
気絶するように寝ていたようでありまして、
夢に命名の神さまがでてきたかどうかも覚えていない私。

しかしおかげで、頭のなかだけは冴え渡っています。

私がこのイプヘケにどのように生きてほしいか。
私との出会い、縁、そしてこれから。

私をダンサーに育ててくれたクム・フラ、
ハーナイ・ママであった最愛の人、アンティ・ケアラ。

私とフラを出会わせてくれたハーナイ・ママ、
溢れるほどの愛情を注ぎ込んでくれるジュンコ・ママ。

尊敬するダンサーであり、親友であり、妹でもある
私のクム・フラ、カウイ。

この三人に共通していることは、
彼らが「純粋」であることです。

生きることに純粋であること。
純粋であることが、彼らの原点。
その原点が生きる強さ。

イプヘケをたぐり寄せて、静かに抱きしめると、
心がどんどん穏やかになっていきます。



Ka ma’ema’e o ka lani
(カ・マエマエ・オ・カ・ラニ)

天上の清らかさ、生粋の存在を意味する名前を贈りました。

名は体を表わす、とは、日本もハワイも同じようです。
私も、自分の名前が、何がどうあれ、
自分の生き方に強く影響しています。

ですから、名づけ親となり、パートナーとなった私が、
イプヘケにひとつの運命を渡したのかもしれません。

あとは、集中あるのみ。
日々の練習をもって、舞台にあがることが仕事。
そのときに合わせて、自分を調整していくだけです。

さて、明日はついに前日!

author : jingujiai
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神宮寺 愛
writer & coordinator
(J.U.One Corporation)
'ōlapa(Pā'ū O Hi'iaka)
@ Maui, Hawaii